耐火物誌

1988/7月

随想 技術報告と国際化 小桜芳郎 403
技術報告 高炉用炭素含有れんがの開発 平櫛敬資,鹿野弘,加治信彦,原田力 404
溶銑予備処理用耐火物 田畑勝弘,市川健治,藤原禎一,吉村裕次,多田秀徳 411
連続鋳造用黒鉛質ノズルの開発 鹿野弘,境正弘,金子俊明 420
シリカによるジルコニア耐火物の脱安定化挙動 新谷宏隆,長谷川晋 428
省エネルギー燃焼技術 宿谷昭夫,岩城克弘,右田昭一 436
誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)の耐火物への適用 恒次邦男,山根利夫,高橋弘,小口征男,川上辰男 443
酸素吹き込みRH装置におけるマグネシア-クロムれんがの損傷機構 笹島康,川本英司 451
サロン 社内技報“耐火材料” 白石晃久 457
統計 統計 耐火物の生産実績  銑鉄粗鋼生産速報      
会報      
編集後記  1988年も早や半年が過ぎ,報告書作成に忙しい後半を迎えた。7月号をお届けする。今月号は耐火物メーカー3社の技術情報誌のエッセンスを掲載する。このため本号をTransaction Issueと銘じた。 現代は情報化時代と言われ,情報が巷にあふれているが・そのわりに我々は身近な,そして重要な情報を十分に吸収していない。品川白煉瓦,黒崎窯業,川崎炉材の3社はそれぞれ"品川技報,"耐火材料,"川炉技報,を発刊されている。これら技報は公報誌であるから本会会員各位は既に読了されているはずであるが,必ずしもそうでないのが現代社会の不思議なところである。 そこで過去2年間に発刊された3社技報から,特徴のある6編を取り上げて転載することにした。各論文は本号のために・原稿を改めて執筆して頂いた。掲載ご許可と再執筆に対して厚くお礼申し上げる。テーマの選定にあたっては,従来の本誌に掲載されなかった内容で,かつ幅広い範囲をもたせることにした。
 品川技報からr省エネルギー燃焼技術」とr溶銑予備処理用耐火物」を,耐火材料から「連続鋳造用黒鉛ノズルの開発」とr高炉用炭素含有れんがの開発」を,そして川炉技報からrシリカによるジルコニア耐火物の脱安定化挙動」とr誘導結合プラズマ発光分析法の耐火物への適用」をそれぞれ技術報告として掲載することに決めた。いずれもこれまでの本誌とは一味違うユニークな内容である。ただし,内容を書き直して頂いたとはいえ,各社の技報をベースにしているため,各社の商品名や論旨に宣伝臭が残っており,投稿規定から見れば問題があるが・Transaction であることを考慮して了とした。
 本号を契機に,各社の技報が会員各位に愛読され,また今回掲載したような幅の広い内容の原稿が本誌に投稿されるようになることを希望する。本号の編集の主旨にあわせて,随想には川鉄テクノリサーチの小桜氏から技報と国際化の観点から,またサロンには黒崎窯業の白石氏から技報の編集の観点から,それぞれ啓蒙されるエッセイが投稿された。編集委員会も傾聴すべきご指摘を受けたことを感謝するとともに,両氏の意が活かされるように願っている。
 熱力学講座も11回を数え,今月は東京窯業の川本氏の「酸素吹き込みRH装置におけるマグネシア・クロムれんがの損傷機構」である。特に酸素吹き込み操業における高温下の鉱物挙動は他の事例にも応用できる命題であり,耐火物の耐用を論ずるときの重要課題である。典型的な熱力学事例であり,現場への有効な活用を積極的に図られることを望んでいる。 今回もまた投稿が遅れ,査読者各位に十分な時間が与えられずご迷惑をおかけした。余裕をもって計画したが結果は追い込みに忙殺されることになった。できばえの至らない点がある。著者・査読者・編集委員会のそれぞれが余裕のある体制を確立してレベル向上に努めたい。
 本誌に,企業が発刊している技報の論文を転載するのは初めての試みである。もし読者のご賛同が得られるなら,海外誌を含めてTransactionが1年に1号ぐらいあっても良いのではないかと考えている。忌揮のないご意見を寄せて頂きたい。 今年は12月に第1回の年次講演会がある。年次講演会に優秀な研究発表が数多く応募され,その中の優れた論文が来年の本誌を飾ることを願望している。            (担当編集委員:森・森本)      461